軽トラ和尚の旅日記

軽トラの荷台に坐禅堂を積んで走る禅僧の修行

軽トラ和尚の旅日記

山河、顧みて恥じることない足跡を山に残したろうか?

 五木ひろしの持ち歌の「山河」は、小椋佳作詞、堀内孝雄作曲の名曲だ。

ただ五木さんや堀内さんには悪いが、小椋佳さんの歌い方が好きである。

自分には出来ない、あの力まないで、サーっと歌い上げる感じが、

この歌の持ち味を最大限に引き出してくれる。

 

曲も朗々としていて良いのであるが、

この歌は何といっても詩の深さである。

 

随分前(2,000年)に紅白の大トリで五木ひろしが歌ったときには

大袈裟な歌だなあとしか思わなかったし、正直、感動もなかった。

 

ところが最近YouTubeで小椋佳の山河を何気に観て、

なんと感動してしまったのである。

未だに「顧みて・・・」の部分が耳から離れない。

 

人は皆 山河に生まれ 抱かれ 挑み
人は皆 山河を信じ 和み 愛す

そこに 生命をつなぎ 生命を刻む
そして 終いには 山河に還る

顧みて 恥じることない 足跡を山に 残したろうか
永遠の 水面の光 増す夢を 河に浮かべたろうか
愛する人の瞳に 愛する人の瞳に
俺の山河は美しいかと 美しいかと

歳月は 心に積まれ 山と映り
歳月は 心に流れ 河を描く

そこに 積まれる時と 流れる時と
人は誰れもが 山河を宿す

ふと想う 悔いひとつなく悦びの山を 築けたろうか
くしゃくしゃに嬉し泣きする かげりない河を抱けたろうか
愛する人の瞳に 愛する人の瞳に
俺の山河は美しいかと

顧みて 恥じることない 足跡を山に 残したろうか
永遠の 水面の光 増す夢を 河に浮かべたろうか
愛する人の瞳に 愛する人の瞳に
俺の山河は美しいかと 美しいかと

人は皆、大地に生れ、ではなく「山河」に生れとある。

人生を山と河に擬えて作られたこの詩のテーマはむろん山河だ。

この場合の山や河って何だろう?

人それぞれに受け止めればいいのだが、

俺は単純に「山」が住んでいる場所や人々、社会であると思ったし

これも単純に「河」が時の流れや時間であると思った。

 

小椋佳はいわゆるシンガーソングライターであるが

詩人であり哲学者のようでもある。

とくにこの歌や愛燦燦などは哲学者の言葉のようだ。

 

還暦を過ぎて、この歌を聴くと

若い時のそれとは全く違う方向から観ていることに気づく。

自分の人生を振り返って、悔いのない人生であったか?

今死んでも悔やまないか?

 

そう自問自答した時

やり残していることの多さに悔しくて眠れなかった。

 

もう一度やってみよう。

友と、くしゃくしゃの嬉し涙を流し合いたい。

 

この山に己の行いを残して、

この河を思い切り抱きしめたい。

そして文字通りの山河に帰っていこう。

土や水そして風になろう。

 

今はもう眼には見えない愛する人々が

ふと笑った気がした。

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